イタリアはSTORIA(ストーリア/歴史)が見える国だ。ことにローマはそう。
古代ローマから始まって、近代に至る「現物」が町を作っている。
10年程、コロッセオから徒歩5分のアパートに住んだ。
アパートは300年前の建物で、窓枠の大理石には「1954」と誰かが掘ったものが残っていた。
ローマはSTORIA(ストーリア)の中に日常がある。日常の中にSTORIA(ストーリア)がある。時は流れ、全て移り変わる「諸業無常」を毎日の生活の舞台にしている。
STORIA(ストーリア)を身近において生きていると、時代を経て生き残ったものの価値を見い出すようになるようだ。
ローマの下町には、かなり少なくなったとは言え、古いものの修理職人の工房が並んでいたりする。アンティークの店も多い。
靴やバッグの修理屋さんもまだまだ見られる。
電化製品が壊れると、まず修理する事を考える。
おばあちゃんの金のイヤリングを受け継いで、大事な日に身につける。
曾祖父が使っていた家具を修復して寝室に置く。
そんなエピソードは身近に事欠かない。
古い歌がラジオ、テレビから流れる。リバイバルというわけでなく、新しい歌に混じってスタンダードとして流れる。
新しいものをムキになってさがさない。保守的になるきらいもあるが、そのかわり熟成させる事を知る。市場や文化が日本程20代30代に片寄ってないところも、そんな所に由来するのではなかろうか。
先日、1997年のブルネッロ・モンタルチーノの赤を飲んだ。
5年寝かせなくては外に出さないワインだ。
程よく熟成して、深い味わいのあるワインだった。
STORIAは「歴史」だけでなく「物語」と言う意味もあります。
映画や小説のストーリーはSTORIAです。
他に、何かすべき事をしない時に、とか、なにか頼まれ事をいやがって、ごちゃごちゃ言い訳をする事を「STORIAを言う」という言い方をします。
ローマから吹く風 その24:6月3日発行
次回をお楽しみに!