:その9:PRESEPIO
(プレセピオ/キリスト降誕場面)

はい!おまたせしました!
イタリアのNATALE用品、
PRESEPIO
(プレセピオ/キリスト降誕場面)の登場。
ひな祭りの人形達のクリスマス版とでも言おうか。
キリスト降誕の場面を現わす、人形群とその背景。

あぁ、クリスマスってキリストが生まれた事を祝う行事だったな、と思い出させてくれる。
PRESEPIO(プレセピオ)で一番重要なのは、言うまでもなく赤子のキリスト。
これだけ飾る人もいる。
(24日の夜まで、藁のベッドは空のままにしておき、零時にキリストの人形を置く事になっている。)
そして母マリアとヨセフ。

ひな祭りでお内裏様だけ飾るみたいに、これだけでもいい。

もっと賑やかにしたい場合は、納屋だから牛、馬の動物。
羊飼いもキリスト教のシンボルで重要なキャラだ。
さらに付け加えるなら、救世主の誕生を祝福しにきた東方三博士。

これで、宗教的意義はそろった。
納屋をかたどったものの上に、「GLORIA」と書いた布を持つ天使でもつければ完璧だ。


でもこれだけではもの足らない。

遠い国で起こった出来事を自分達のそばへ持ってくる。
魚屋、ハム屋、の店を作る。
ポレンタ(トウモロコシの粉を鍋の中でお湯とかき混ぜて作るお粥)を火の上でかき混ぜる奥さん、
籠をなう老人、ワインのグラスを持ち上げていい気持ちになってる人… 
庶民が
PRESEPIOに登場する。


今の
PRESEPIOは、おそらくPRESEPIOが盛んになった、
100-200年前の庶民生活を表現するのが普通だ。
女は長いスカートにエプロンをつけ、男はシャツにチョッキ、ヒザ丈のズボンをはいている。

ナポリ、シチリアなどの南イタリアへ行くと、電気仕掛けで鍛冶屋の腕が振りおろされ、
老女が刺繍の手を動かし、農夫が藁を積み上げる。

ナポリで手作りされた、テラコッタのアンティーク
PRESEPIOは好事家がねらう。

人形だけでなく、背景も当時の民家を模して作る。
もっとも、100-200年前の建物は実物も珍しくないけど。
実際、ちょっとドライブして、遠くに山に張り付いた村落を見ると
PRESEPIOみたい」なんていう言い方をする。


PRESEPIOは家庭だけでなく、町の主要場所、各教会でもそれぞれ工夫を凝らしたものが飾られる。
ローマで有名なのはトリニタ・ディ・モンティ、いわゆるスペイン階段の中段に飾られるもの。
ローマの下町の様子が身長1メートルほどの人形群で構成される。

もうひとつ、テルミニ駅の中に飾られる
PRESEPIOは15センチほどの人形群が
前世紀の村落を再現して、ひとつひとつの人形の様子や服装を見るのが楽しい。

日頃、不信心な人たちもクリスマス前後には
PRESEPIOめぐりで、
各教会をまわるのは、急に善男善女になって初詣でをする日本のお正月を思い起こさせる。


:今日の単語:
PRESEPIO
PRESEPIO
はもともと、飼い葉桶の意味です。
キリストが納屋で生まれ、飼い葉桶をベビーベッドにしていた事から、
キリスト降誕場面を現わす人形群を総称する名前になったのでしょう。

PRESEPIOは、飾り始めたら、7年は続けて飾らないといけない、と言われています。
スーパーで買って来た安い人形達も年々少しづつ増え、かれこれ10年は飾ってます。
川を作って電気仕掛けで水車を回したり、家の中に明りがつくようにしたり、凝る人はすごく凝ります。

NATALEが終わると、イタリアは一段落した感じになります。

2001年12月20日発行


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